日食のために開発したC42のHDR
日食の明るいコロナから暗部まで捉えるために開発したC42のHDRを紹介します。ファイル保存前から始まる処理、センサーの読み出し、撮影データの仕上げにつながる仕組みを解説します。
29段のダイナミックレンジを持つ日食画像が、カメラ内HDR処理の開発につながりました。
01|カメラにとって厳しい光の条件
明るい時間帯から暗い時間帯へ、露出を滑らかに変えながら撮るタイムラプスは、天体撮影でも難しい課題のひとつです。
皆既日食では、太陽が隠れるとともにコロナが現れます。明るいプロミネンス、淡い外側の構造、月の暗い面が同じ画面に入り、撮り直す時間はありません。
C42は、この撮影課題に対応するために開発しました。
C42は、フルサイズカメラを中心に、追尾、冷却、ガイド、高速ストレージ、無線操作、カメラ内画像処理をまとめた天体撮影システムです。被写体が持つ光の情報を、できるだけ多く残すことを目指しています。
02|ファイル保存の前から始まるHDR
C42のHDRは後処理のフィルターではなく、撮影の段階から始まります。
日食撮影では、1/10,000秒から1秒まで5段階の露出を連続撮影します。短い露出で明るい太陽周辺を、長い露出で淡い外側のコロナを記録します。

1回の連続撮影は2秒未満。カメラ内でダーク、バイアス、フラット補正を行い、露出の異なる画像をひとつのRAW画像に合成します。
日食の短い撮影時間に集中できるよう、露出シーケンス、キャリブレーション、HDR合成を一連の処理にまとめています。配線の変更やソフトの切り替え、手作業の位置合わせを減らします。
03|製品機能になる前の開発
開発の始まりは2015年。Sonyセンサーを解析し、自作FPGA基板を使って、センサーの生データに直接アクセスする取り組みから始まりました。
この試作機により、撮影、補正、画像処理を別々の機器に分けず、画像ができるまでの経路をひとつのシステムとして検証できました。
2017年には試作機をワイオミング州へ持ち込み、望遠鏡に取り付けて皆既日食を撮影しました。大きな明暗差と限られた時間の中で、実際の空を使った検証を行いました。
この経験から、HDRを撮影後の効果として追加するのではなく、実際の天体撮影の課題に応えるカメラの中核として開発しました。
04|日食以外の撮影にも
HDRは、C42システムを支える機能のひとつです。
ガイドのずれ、センサーノイズ、書き込み速度、ケーブルの引っ掛かりなど、長時間撮影で起こる課題を一つずつ減らすために開発しています。
- 内蔵ガイドにより、別のガイドカメラを使う機材を減らせます。
- 冷却で、長時間露光時の熱ノイズを抑えます。
- SSDストレージで、HDRの連続撮影と大量の撮影データを保存します。
- 無線操作で、暗い現場での配線を増やさず、構図確認、ピント合わせ、データ転送を行えます。
へびつかい座ρ星付近、サドル付近、冬のオリオン座・天の川、デスバレーでのHDRタイムラプスにも、安定した撮影と扱いやすいデータという同じ考え方を生かしています。
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日食HDRから星雲・銀河、天の川、タイムラプスまで、空が持つ光を記録するための撮影システムを開発しています。
